家から30分のエスタディオ・アルガルヴェで、スポルティングが7点取った夜
夏合宿の最終戦、スポルティング対ストラスブールは7-0。Euro 2004のために建てられ、「白い象」と呼ばれたスタジアムで、今季初めてスポルティングを観た。
- スタジアム
- エスタディオ・アルガルヴェ(アルマンシル(ファロ/ロウレ)、ポルトガル)
- 観客数
- 未確認
- 熱狂度
- ★★☆☆☆
今季の1試合目は、家の近くから
2026-27シーズンの現地観戦は、この試合から始まった。
エスタディオ・アルガルヴェは、僕の住むオリャオンから車で30分ほど。ファロとロウレのちょうど中間、アルマンシルという集落の近くにある。スポルティングは毎年7月、このスタジアムを拠点にアルガルヴェで合宿をしていて、その仕上げの試合を一般公開する。
7月20日、月曜の20時15分。相手はフランスのRCストラスブール。合宿の最終戦だった。
チケットは試合の3日前、7月17日の昼に MEO Blueticket で買った。西スタンド下段(ポエンテ・インフェリオール)のS5、C列35番。35ユーロに手数料9%が乗って38.87ユーロ。支払いはMB WAY(ポルトガルのスマホ決済)で、ソファに座ったまま30秒で終わった。ついでに、11日後のノッティンガム・フォレスト戦も同じ席のブロックで押さえた。この「ついでに次も買う」が、僕のグラウンドホッピングの基本動作になっている。
この日は一人だった。一人で行くサッカーには、一人で行く良さがある。隣に座った人と話すか、黙って観るか、自分で決められる。
Euro 2004が残した「白い象」
このスタジアムは2003年11月23日に開場した。Euro 2004の会場として、ファロ市とロウレ市が共同で建てたものだ。設計はPopulous(当時はHOKスポーツ)。高さ73mの吊り屋根が座席の約3分の2を覆う。公式の収容人数は30,305人だが、2023年以降、リーグ戦では安全上の理由で22,000人に制限されている。
Euro 2004では3試合が行われた。スペイン対ロシア(1-0)、ロシア対ギリシャ(2-1)、そして準々決勝のスウェーデン対オランダ。0-0のままPK戦になり、イブラヒモビッチとメルベリが外して、オランダが勝った。
大会が終わると、問題が始まった。アルガルヴェには1部リーグのクラブがない。ファレンセが2004年から2013年まで本拠地にしたが、2部に昇格したのを機に、改修した自分たちのスタジアムに帰っていった。ロウレタノは名目上ここが本拠地だが、下部リーグの試合に3万人のスタジアムは大きすぎる。
2010年の新聞には、両市が年間310万ユーロを返済と維持に費やしているという記事が載っている。「白い象」。使い道のない巨大な建物を指す言葉で、このスタジアムはまさにそう呼ばれた。
【写真:スタジアム外観と吊り屋根】
白い象は、もう白い象ではない
ただ、話はそこで終わらない。
2025年2月の地元紙には「白い象から、国内で最も収益性の高い施設の一つへ」という見出しがある。2023年の収入は230万ユーロで黒字。2024年には融資を完済し、無借金になった。年間150〜200のイベント、職員は5人。
何で稼いでいるのか。ポルトガル代表の試合(ここで19試合15勝4分、無敗)、スーペルタッサの決勝(2008、2015、2019、2025)、タッサ・ダ・リーガの決勝、女子のアルガルヴェカップ、ジブラルタル代表の暫定ホーム。そして、スポルティングやベンフィカのプレシーズン。2026年の夏はベンフィカもここでフラメンゴとビジャレアルと試合をしている。
「持て余していたものを、使い道を変えて黒字にする」。これは僕が普段、お金の話で言っていることそのものだ。持っている資産の価値は、使い方で決まる。3万人のスタジアムを地元クラブで埋めようとするから赤字になる。代表戦と決勝とプレシーズン合宿の会場として貸し出せば、無借金になる。
スタジアム経営の話が、自分の人生に返ってくる。そういう夜だった。
試合:新加入が全員決めた
観客数は公式には出ていない。クラブの試合報告は「多くのスポルティングサポーター」とだけ書いている。
西スタンドの下段は、ざっと見て7割くらいが埋まっていた。東側と両ゴール裏はまばらで、遠くに緑と白の小さな塊がいくつか見えるだけ。それでも、その小さな塊が試合中ずっと歌っていた。
ここで正直に書いておくと、この日のスタンドに「熱狂」はなかった。あったのは、ゆったりした空気だ。7月のアルガルヴェ、親善試合、20時15分でもまだ明るい。家族連れが多くて、子どもたちは通路を走り回り、お父さんはビールを持って立ったまま試合を観ている。隣の一家は、前半のうちにお菓子の袋を3つ空けていた。ゴールが入ると全員が立って拍手をするけれど、叫ぶ人はいない。夏休みの夜のピクニックに、たまたまスポルティングが来た、という感じだった。
これはこれで、ポルトガルのサッカーの一面だと思う。リスボンのアルヴァラーデでは、こんな空気はたぶんない。でも夏の南部では、緑と白のレプリカを着た3歳児が父親の肩に乗って、初めてのスタジアムを観ている。40年後にアルヴァラーデで叫んでいる人は、こういう夜から始まるのだと思う。
C列は前から3列目。ピッチが近い。ウォーミングアップの選手のスパイクの音まで聞こえる。
4分、新加入のイスマイラ・ドゥンビアが先制。36分、これも新加入のセルジ・アルティミラ。51分、やはり新加入のS・アンデルセンがヘディングで3点目。
65分、途中出場したリカルド・サラサールが、自分で得たPKを自分で決めた。スポルティングでのデビュー戦だった。70分、ワールドカップ明けで復帰したマキシ・アラウージョ。80分、ジェニー・カタモ。84分、フォティス・イオアニディス。
7-0。前半には給水タイムがあった。7月のアルガルヴェの夜は、20時を過ぎてもまだ暑い。
監督はスポルティングがルイ・ボルジェス、ストラスブールがウーゴ・オリヴェイラ。元ファマリカンの監督で、ポルトガル人だ。
ちなみにスポルティングは同じ日の午前中、別の練習試合でポルティモネンセにも1-0で勝っている。1日2試合。合宿の最終日らしい詰め込み方だった。
プレシーズンの試合を観る意味
7-0の親善試合を「熱狂」で語るのは無理がある。相手も本気の布陣ではないし、スタンドも満員ではない。
でも、僕はプレシーズンの試合が好きだ。
理由は二つある。一つは、新しい選手を最初に観られること。ドゥンビア、アルティミラ、アンデルセン、サラサール。この4人がスポルティングのユニフォームで初めてゴールを決めた夜に、僕はスタンドにいた。シーズンが進んで、彼らがアルヴァラーデで大事なゴールを決めるたびに、「あの7月の夜に観たな」と思い出せる。
もう一つは、気楽さ。勝ち負けに意味がないから、純粋にサッカーを眺められる。ビールを飲みながら、隣の人と喋りながら。緊張感のあるダービーとは違う、夏の夜の娯楽としてのサッカー。
そして何より、家から30分だ。
旅のメモ
- アクセス:アルガルヴェ線に「パルケ・ダス・シダーデス」という専用駅がある(ファロから約8km)。駅からスタジアムまで徒歩約15分。車ならA22の13番出口からIC4、またはEN125。駐車場は4,000台分。
- ファロ空港から:道路で約11km。タクシーで15分ほど。
- 注意:ゴール裏のスタンドには屋根がない。北と南の上段は可動式で、UEFA主催の試合では使われない。
- ついでに:ファロの旧市街(アルコ・ダ・ヴィラは1812年落成、鐘楼にコウノトリが巣を作る)と、リア・フォルモーザ自然公園(約18,400ha、海岸線60km)。ロウレの市営市場は1908年開場、アラブ趣味の建物。